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ミニ情報通信

令和2年度北海道・東北・関東甲信越ブロック合同障害者雇用特別セミナーが開催されました。

令和2年12月4日(金)午後1時15分から、標記セミナーがオンラインで開催されました。
 このセミナーは、全障協が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止及び合理的配慮に係るノウハウ普及・対応支援事業」の一環として開催されたものです。

最初に全障協の栗原会長から開催のあいさつがあり、その概略は次のとおりです。
1)新型コロナウイルス感染症の影響下にあって、皆様には、障害者の雇用促進・維持や感染予防対策等にたいへんご苦労さてれいることと拝察する。新型コロナウイルス感染症の一日も早い終息をお祈りする。2)全重協は本年4月1日から全障協に名称変更し新たなスタートを切った。引き続き、ご理解・ご協力をお願いする。3)厚生労働省からの受託事業として、本セミナーの他に、全国7か所に設置した障害者雇用相談コーナーにおいて相談支援を実施している。是非、気軽に活用いただきたい。4)本セミナーでは、新型コロナウイルス感染症の影響下にある現況を踏まえたテーマを設定しているので、是非参考にしていただきたい。

次いで、田沼全障協理事の司会進行のもと、プログラムが進められ、、まず、「withコロナの時代における障害者雇用〜精神障害者の安定した職場づくりに向けて〜」と題してパネルディスカッションが行われました。
最初にコーディネーターとして東洋大学社会学部社会福祉学科教授の志村健一様から、1)朝日新聞の記事によると、厚生労働省のとりまとめで本年2月から6月の障害のある方の解雇者数は1,104人(前年同期比16%増)で、新型コロナウイルスの影響により企業経営が悪化していることが背景にあるとみられている。この数字はハローワークでの状況の聞き取りをまとめたものであり、実態より少ないのではないかと感じている。本年5月の新規求人数も前年同月より36.1%減少しており、雇用情勢が厳しいことが明らかになっている。2)東京新聞の記事によれば、新型コロナウイルス対策で企業がテレワークを進めており、オフィスで働いている障害のある方々の仕事が減っていると報道されている。知的障害のある方々のオフィスの仕事は清掃や配送物の仕分けなどであり、社員の出社減少というようなものが、実際には知的障害のある方々の仕事を奪ってしまっている状況がこの報道でわかり、状況は益々厳しくなるとのことである。3)同じく東京新聞によれば、障害のある方々はこうした仕事以外はできないと決めつけずに、コロナ禍において、何が障害のある方々に対して提供できる仕事なのかを考えて新たな仕事を産み出すような工夫が必要になっており、国はそれを支援すべきであることを「手をつなぐ会」の理事が訴えている。4)障害者への支援は個別性が高いことを忘れずに念頭に置きつつ、精神障害のある方々の支援ニーズを整理すると、次のようになる。すなわち、@服薬支援、かかりつけ医との緊急対応等の医療的ニーズ、A身だしなみ、食事、住まいに関する支援などの生活に関するニーズ、B身近な人々との関係づくり、関係のメンテナンスの支援等の社会とのかかわりに関するニーズであり、これらは相互に重なり合う部分があることから、ネットワークを構築して支援が展開されてきた。5)しかし、新型コロナウイルスの影響で、通院控え、生活のリズムの維持しにくさ、人との関わりの減少、解雇といった状況が生じ、これらのニーズのバランスが崩れてしまっていることが見受けられる。6)こうした中、厚生労働省による新しい生活様式(ニューノーマル)の実践例が推奨されている。これらは、精神障害のある方々にとってマイナスなことばかりではなく、ニューノーマルを新たに創っていく推進役になり得るのではないか、個別性を尊重し合い、得意な分野を活かしてもらうようなニューノーマルを精神障害のある方々と共に創っていくことができないだろうかと考えたい。7)こうした精神障害のある方々のストレングス(強み)を活用した支援が展開できるかどうかが、今後の精神障害のある方々の雇用に関して大きなポイントになると思われる。8)問題は本人ではなく社会構造にあるととらえ、パワーレスネス(自分の持っている力を発揮する場面が社会構造的に奪われてしまっている状況)からの脱却が可能だということをお互いに自覚し合い、脱却するための新たな知識・スキルを習得することと、それを支援することが必要であり、それらを用いて資源を効果的に活用・創造して問題の解決を図ることがソーシャルワークにおけるエンパワーメント・アプローチである。9)安定した職場づくりのためには、当事者がニューノーマルをしっかりと認識したうえで、能力を発揮するための知識・スキルを習得し、それらを効果的に活用してさらにニューノーマルを創っていく推進役になっていただきたい。10)職場と支援者については、ニューノーマルを職場として再確認いただき、その中で精神障害のある方々とともに仕事をするうえで必要な知識やスキルを習得いただきたい。これらを効果的・創造的に活用し、障害者とともに働くニューノーマルをさらに創っていただきたいと考える。11)このように、雇用される側とする側の二元論ではなく、共に職場を創っていくこと、協働する仕組みづくりが今まさに求められており、こうしたことをポイントに本日のディスカッションを進めたい。といったお話がありました。(志村様のお話の詳細は、こちらの資料をご覧ください。)

次いでパネリストとして、文京区障害者就労支援センター所長の藤枝洋介様から、概略次のようなお話がありました。
1)当センターは文京区内在住の障害のある方と区内事業所を対象としており、登録者は621名となっている。2)緊急事態宣言前後の相談は、不安に関する内容が中心になっていた。就職活動ができない、余暇活動の機会がなくなった等の機会の減少、自宅待機や業務量の増減などの働き方の変化、契約更新が難しい等の契約への影響、家庭環境の変化や外出に対する不安等の生活の変化などである。3)働き方の変化としては、働く場所、時間や業務内容の変化、さらには自身だけではなく、所属部署や上司、同僚などのまわりの変化もみられた。4)withコロナ前は、安定した職場づくりの視点として体調管理、コミュニケーション、業務遂行という要素があったが、これらはwithコロナ時代でも本質的に変わっていないと感じている。ただ、その手段、特にコミュニケーションの量・質が変わっている。5)以下は、あくまで例示であり、何が必要か、どこまでできるかは働く方と会社とで相談していただきたいと思うが、雇用のポイントとしては、次のことがある。6)在宅勤務等の際の体調管理については、表情や声のトーン、しぐさなどにより、これまで何気なく行っていた部分を見える化・構造化することがポイントであり、体調についての毎日の確認を時間、方法等をルール化し行うこと、また、例えば5段階評価などお互いにわかりやすい方法で体調のバロメーターを設定することなどが挙げられる。7)見える化・構造化による相談のしやすさは一番のポイントであり、相談時間の設定など相談機会のルールを作る、今相談してもよい状況であることがわかるようなルールを決めておく、相談方法を1つに拘らず電話、メール、チャットなど複数のコミュニケーション手段を活用できるようにしておき、その手段を決めて相談方法を構造化するなどが考えられる。8)業務負担調整や業務指示も今まで見えていたものが見えにくくなってしまった点がポイントであり、業務のスピードや量の段階的な調整や、相談体制の整備などが考えられる。9)会社の一員として頼りにされている、役に立っている、期待されているという感覚があることが大事であり、手段が変わってコミュニケーションが減っている状況では、これらを意図的に伝えることも大切。
 こうしたお話と併せて、事例として、在宅勤務になりチャット(文字情報)による業務指示だけではわかりにくいため、電話による補足説明を行うこととしたケース、在宅勤務で通勤時間がなくなり生活のリズムが変化し、通勤勤務に戻った際に生活のリズムが不安定になり体調にも影響して休みがちになってしまい、働き方の段階的な変化により影響を少なくして(時間が増える、早くなる場合は特に)復帰を図る必要があったケースについて紹介いただきました。(藤枝様のお話の詳細は、こちらの資料をご覧ください。)

次に同じくパネリストとして、国立研究開発法人理化学研究所業務支援室の中山和子様から、概略次のようなお話がありました。
1)理化学研究所の業務支援室は、ソ−シアルオフィス方式といって、特例子会社の社内版といったような形で、障害者に勤務を続けていただこうという取組を行っている。2)所属する業務支援員は49名(2020年10月1日現在)で、うち精神障害者37名(うち、発達障害者10名)、身体障害者9名、知的障害者3名となっている。3)業務支援室の業務の所内への紹介に当たっては、「障害者」という言葉を使わないという設立当初の議論の結論により、「業務支援員一人ひとりがそれぞれの多様性を活かし、お互いに助け合いながら庶務に関するサポートを行っている」という表現にして今に至っている。4)アフターコロナになってから、業務工程は随分変わってきている。代表的には、封入・発送業務について、来年度から発行物が紙媒体からWEB配信となるので、業務がなくなるのではないかと言われている。ただ、研究記録などの紙媒体のものも残っているのでPDF変換業務はやっているが、事務系のものはデータ共有化の方向になっているので、段々変わってくるかもしれない。また、オンライン会議などのため、名刺交換の場面がなくなってきているので、名刺作成業務の受注も激減している。その他、郵便物の集荷・配送業務をやっており、ビフォーコロナでは備品の整備等の会議室管理も実施していた。5)このように基本的には現業が多いなか、現状ではシフト勤務が推奨されており、半分は出勤、半分は在宅勤務という形になっている。在宅勤務でやれる業務を少しずつ切り出して自宅からメール対応するということをやっているが、49名全員が在宅勤務できるかどうかは現時点でも模索中である。6)業務支援室としては、業務支援員に電話・対人応対はしていただかないという方針であるが、勤務を続けるなかで、できそうと当方が判断したり、本人ができるようになりたいとの意欲を持っている場合は、そうした業務を振り分けたり、機会をつくったりしている。精神障害者は対人応対業務が難しいところがあるが、できるようになることも1つの道と思い今まで取組んできており、今後もやっていきたいと考えている。7)業務支援員には、「自分のハンディキャップを受容し、できない理由を探すのではなく、できることを確実に実行し、努力と協力ができる方」ということで姿勢を説明している。(中山様のお話の詳細は、こちらの資料をご覧ください。)

続いてパネリストとして、有限会社奥進システムの浦田梨佐様から、概略次のようなお話がありました。
1)私の診断名は広汎性発達障害で精神障害者手帳3級を持っており、社内全員にオープンにして働いている。2)発達障害の特性は個人それぞれによって全然違うが、私は言語化が苦手、不安・緊張が強いという特性を持っている。3)面接が苦手で大卒時に就職が決まらず、コミュニケーションの訓練等ができる就労支援施設に通うことにした。事務職希望だったので、その職場実習で(有)奥進システムに申込み、ホームページ制作を初めて体験して手応えを感じたので、不安はあったが入社を決めた。4)働く上での配慮ポイントとして、その場の状況だけ見て必要なことを判断するのが困難なため、具体的な指示をいただくようにお願いしている。また、社内には「苦手なことはやらない」というルールがあり、苦手さを伝えて電話はとらなくてよいようにしていただいている。5)コミュニケーションは、メール、チャットを使って行うことが多く、文章化されるので理解がしやすい。また、口頭で話すより緊張感が少なく、コミュニケーションの負担が減りお客様とのやりとりも行っている。6)定期的な面談が行われており、日常的な雑談が苦手なので、面談の機会にしんどいこと等を相談でき助かっている。7)日々の日報としては、今日の業務と感想(仕事の調子)を記載する業務日報と、今日の体調を記録するSPISがある。SPISでは、会社代表が必ずコメントを返してくれるので、安心感がある。8)周りの社員の雰囲気は、働き続けるうえで一番大事だと思う。しんどいことを伝えやすい、何でも言いやすい雰囲気を周りの皆様が作っていただいているように感じる。9)仕事以外のことでは、友達づきあいの経験があまりないので、コミュニケーションの取り方をあまり知らないが、お話しできるとうれしい。10)仕事となると、配慮を受けていてもしんどい面はある。このため、楽しめる時間は自分で作るようにしている。会社の配慮とともに、障害者としても働き続ける努力をしないといけないと思う。11)ソーシャルディスタンスの距離感は心地よく感じられ、コロナ禍にあっても悪いことばかりではないのではないか。12)3月頃から完全在宅勤務(週一日くらいは出勤)となった。在宅勤務では、周りが見えないので疎外感が少ないこと、通勤時の体力的・精神的負担がないこと、仕事中に歌ったりしても見られていないので、ストレス発散がしやすいことなどの利点がある。ただ、チャット(文章)でのやり取りだけになるので、表現がきつくならないように気をつけている。また、運動不足にならないように席を立って動いたりするようにしている。(浦田様のお話の詳細は、こちらの資料をご覧ください。)

以上のパネルディスカッションに続く第2部として、ZOOMのブレイクアウト機能を用いて参加者が7人程度の小グループに分かれることにより、グループディスカッションが行われました。

最後に、各グループのチャット書き込みを踏まえて、第3部インタラクティヴ・ダイアログが行われました。
まず、コーディネーターの求めに応じ、(有)奥進システム代表取締役の奥脇学様(全障協理事)から、会社風土の醸成過程、在宅勤務の進め方についてお話がありました。1)一人一人に応じた個別対応と様々な配慮を、各自の困り感に一緒に向き合いながらずっとやってきた。それが会社風土になっている。2)身体障害者を雇用していることから、15年くらい前から在宅勤務を実施していた。このため、仕事の見える化・切り出し方、コミュニケーションの取り方についてノウハウが蓄積しており、コロナ禍においても2日くらいで在宅勤務に転換できた、とのことです。
その他、コロナ禍におけるコミュニケーションの維持の仕方、在宅勤務の際のコミュニケーションのタイミングや具体的な業務指示の仕方、情報漏洩の懸念への対応、支援ツールの活用方法、働く側から見て在宅勤務で困ったこと、オンライン会議の文字おこしやテイクアウト等の新たな社会資源の創出などの話題が、グループディスカッションの際のチャット書き込み内容を踏まえて提供されました。

インタラクティヴ・ダイアログの結びとして、コーディネーターから、1)メールやチャットによるコミュニケーションの見える化に、電話やオンライン連絡を加えて表現を柔らかくするなど、コミュニケーションへの配慮が重要であることを学んだ、2)障害のある方々と企業等が一体となって新たな領域を開いていく努力が見えた、 とのお話があり、セミナーを終えました。